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製薬業界でもデジタルマーケティング。MR活動を効率化し、情報価値を最大化するZEUSプロジェクト

  • データ/テクノロジーストラテジー部門
    デジタルストラテジー事業部
    井上喬
  • データ/テクノロジーストラテジー部門
    デジタルインテグレーション事業部
    柵木拓実
  • データ/テクノロジーストラテジー部門
    デジタルストラテジー事業部
    松本知晃
  • データ/テクノロジーストラテジー部門
    デジタルストラテジー事業部
    稲垣慶亮
※所属・役職は2021年6月時点のものです。

製薬業界でも、デジタルマーケティングによる営業力の強化と効率化が進んでいます。

創業1678年、日本最古の製薬会社である田辺三菱製薬は、2016年から、MR(Medical Representative、医薬情報担当者)による営業活動の効率化と、医師に提供する情報価値の最大化を目的としたデジタルマーケティングプロジェクト「ZEUS(ゼウス)プロジェクト(以下、ZEUS)」を開始。その構想策定からシステム開発・導入・運用サポートまでを、電通デジタルをはじめとした電通グループが担当しました。

この記事では、電通デジタルのZEUS担当者4人に、ZEUSを構想・開発・導入した経緯と評価、およびデータ/テクノロジーストラテジー部門の仕事内容について聞きました。

営業力強化のためのデジタルマーケティング施策が必要とされていた

田辺三菱製薬はこのプロジェクトを始める前に、どのようなマーケティング上の課題を抱えていましたか?

井上

このプロジェクトが立ち上がった2016年当時、田辺三菱製薬だけでなく、製薬業界全体が同じ課題を抱えていました。ひと言で言えば、SOV(Share of Voice)[注1]重視の営業活動から、顧客ニーズに即した情報提供による営業活動へ転換しなくてはならない、という課題です。

SOV重視の営業活動とは、顧客である医師をMRができるだけ多く訪問して情報提供し、医薬品の認知度を高めて、医薬品の採用増加につなげるという手法です。

近年は医師の専門領域や医薬品情報が細分化・複雑化しており、個々の医師が必要とする最新情報を適切なタイミングで提供することの重要性が高まっています。

しかし、MR1人が担当する医師は、多い場合は100人を超えるとも言われていて、訪問回数を稼ぐ従来のアナログな営業活動ではこなしきれない状況でした。

そうした課題を解決するためのデジタルマーケティング施策を募るコンペ(複数の会社を競わせて優劣をつけ、一社を選ぶ方式)が行われ、電通グループのほかコンサルティングファーム数社が参加。最終的にわれわれが提案したZEUSが選定され、受注しました。

井上喬

Web制作会社等でUXを起点としたサイト設計や大規模サイトのリニューアル・運用に従事。2016年に電通デジタルに中途入社してからは2020年まで、ZEUSの中心メンバーとしてプロジェクトに参画。データやテクノロジーを活用した営業プロセスの改革や、その定着化支援を行う。

デジタルマーケティングでMR活動を効率化・最大化するプロジェクト

ZEUSとはどういうプロジェクトですか?

井上

デジタルマーケティングでMR活動を効率化・最大化するプロジェクトです。

プロジェクト名であり、本プロジェクトで提供するシステム名でもあるZEUS(Zoom on Effective Ultimate System)は、ギリシャ神話のゼウスから取りました。あらゆる情報を司る全知全能の神ゼウスが、デジタルの力を使って「情報」という武器を与えることで、MRの営業活動をサポートする、というイメージをもとに名付けています。

ZEUSではどのようなことをやってきましたか?

井上

ZEUSの目標は、従来のアナログで全方位的かつ経験値に基づいた営業スタイルを、データドリブン(データ分析をもとに課題解決や意思決定を行うこと)な営業スタイルに改めること、そしてPDCA[注2]を回す仕組みを作り上げ、定着させることでした。当初は3年計画で、データ蓄積、データ分析、データ可視化の順番で進めました。

データ蓄積では、MRへのヒアリングを行って、営業現場の課題解決に必要なデータを把握し、データの使用許諾をとりながら、正しく使える形で収集/蓄積しました。近年は個人情報保護法により個人データの取り扱いが厳格になっているので、これも大事な仕事です。

柵木

データを収集/蓄積した後、分析を行い、分析結果をプロジェクトに関わる全員が見られるように可視化しました。

データの可視化の最大目的は、営業活動の効率化です。従来は、担当医師を定期的に訪問して営業活動を行っていたのですが、データ分析/可視化によって、医薬品情報に関心を持っている医師、情報を欲している医師は誰なのかをZEUSがデータから判断して、その時点で訪問すべき医師を個々のMRに知らせてくれるようになりました。

ZEUSの成果、クライアントからの評価は?

井上

営業効率化・最大化のための仕組みを導入し、現場に定着させ、「戦うベース」を整えることができた点を評価していただきました。

営業の現場からも、ZEUSの活用によって、従来よりも医師との接触回数を増やすことができたほか、最適なタイミングで医師へのアプローチを行うことができるようになったなど、デジタルを活用した営業効率化に取り組めている実感があると、好反応をいただいています。

柵木

もうひとつの成果として、ZEUSが、製薬業界内でデジタルマーケティングの先進事例と認知されたことが挙げられます。

電通デジタルとしても、ZEUSを知った他の会社から問い合わせをいただく機会が増えました。

柵木拓実

2019年中途入社。入社して半年後からZEUSに従事。現在(2021年5月時点)プロジェクトマネジメントを担当している。

2つのアプローチを使い分けてデジタルマーケティング課題を解決に導く

データ/テクノロジーストラテジー部門の仕事を簡単に説明していただけますか?

稲垣

デジタルマーケティングでの課題に対して、「俯瞰的(高いところから見下ろす)観点」と「仰視的(仰ぎ見る)観点」からアプローチして、解決策を提案し、解決に導いていく仕事です。

「俯瞰的観点」とは、課題に対して、どういうデータを集める必要があるのかを検討し、それらのデータを集める/蓄積する仕組みを作り、データを分析して、課題を解決していく方法です。実際に起きている課題に対して、ツールや仕組みを作って解決します。

一方、「仰視的観点」とは、わかりやすく言えば、データ分析の観点です。その時点ですでに保有している、あるいは入手可能なデータを分析することでどういう課題が解決できるかを提案し、解決に導いていく方法です。

井上

部門名からは、システム開発を専門に行っているイメージを持たれるかもしれませんが、実際は、システム開発の上流工程(要件定義や設計など)を含む、デジタルマーケティングに関するコンサルティングを行っている部署です。

稲垣慶亮

2019年新卒入社。医師向けWebサイトへのレコメンドエンジン導入や、要件定義・UI設計・データ設計・ツール設定・クライアントへの説明といったプロジェクトの支援、MRの営業活動支援のためのダッシュボード開発プロジェクトを担当。

正解のない課題に挑むプレッシャーとやりがい

データ/テクノロジーストラテジー部門における仕事のやりがいは何ですか?

稲垣

ZEUSに限らず、データ/テクノロジーストラテジー部門の仕事には、正解がありません。過去の事例はもちろん参考にしますが、最終的には、データをもとに自分で考えて、もっとも可能性の高い仮説を提示しなくてはならない。もし間違っていれば、クライアントに大きな損害を与えかねないというプレッシャーもあります。

難しい反面、まだ誰も解いたことがない未知の課題に挑んで、答えを探していく過程にはやりがいを感じました。

松本

やりがいとは少し違いますが、このメンバーとの仕事はとても楽しく感じました。

電通デジタルでは、それぞれの専門家がコミュニケーションを取りながら、問題解決のために一致団結していくというオープンな社風があります。

ZEUSのミーティングも、全員がクライアントへの価値を第一に考え抜きながら、メンバーそれぞれが専門性を発揮し、活発な意見交換ができました。苦しいことも多かったのですが、とても勉強になりました。

柵木

メンバーの出自が異なるのは、他のコンサルティングファームやデジタルマーケティング会社にはない特色ではないでしょうか。井上さんはWebデザイナー出身だし、私は金融系のシステム会社出身です。松本さん、稲垣さんは、お二人とも理系出身だけど、専門としていた分野はそれぞれ違います。

そんなメンバーだからこそ、同じ課題に対しても出してくるアイデアが全然違う。私自身も学びや気づきがいろいろありますが、それが仕事のやりがいになっていると思いますね。

松本知晃

2018年新卒入社。ZEUSでは、営業生産性向上のためのデータ利活用支援を主に担当し、要件定義、施策・画面・分析・データ設計、開発実装まで実施した。

個々が専門性を発揮し、尊重し合う、自由度の高い社風

就活生に伝えたい、働いてみてわかる電通デジタルの良いところは?

稲垣

選べるキャリアの幅が広いところです。広告プランナー、Webデザイナー、コンサルタント、システム開発のエンジニア、データサイエンティストなど、本当にさまざまな専門家がいます。やりたいことがたくさんあって迷っている学生の方にはすごくいい会社なのではないかと思います。私自身もそのタイプだったので。

電通デジタルには、CareerJump!という社内公募制度があって、入社後に担当専門領域を異動することができます。個々人のキャリア設計に関しては、上司が頻繁に1on1ミーティング(上司と部下が1対1で行う対話)を行ってくれて、かなり丁寧に寄り添ってくれます。

もうひとつ挙げるとすれば、社員の平均年齢が若い会社だということ。若手にもかなり責任の大きい仕事が任せられますが、そういうプレッシャーを楽しめる人なら、とても働きがいのある会社だと思います。

松本

働き方自体の自由度が高いところは、強く推しておきたいです。服装コードもないし、フレックス制度やスーパーフレックス制度(コアタイムを取り除いたフレックス制度)があるので、就業時間を自分で決められるところも気に入っています。

また私は、コロナ以前から会社が実施しているリモートワークのPoC(概念実証)に参加していて、2020年1月からずっとフルリモートで働いています。きちんと仕事のパフォーマンスを発揮できさえするのであれば、既存の慣習にこだわらないという考えが私には合っていて、そこは電通デジタルのよさの一つだと思っています。

個々の専門性を軸にしているから、他者を尊重し合う企業文化が育まれているのではないでしょうか。自由度の高いこの雰囲気がものすごく働きやすいですし、好きなところです。

柵木

人を大事にしている会社であることです。当初は、高いモチベーションをもって仕事に取り組んでいる人が多いことに驚きましたし、率直になんてすばらしい会社なんだろうと感動しましたね。

ポジティブな環境に身を置くと、自然と違う分野のことに興味を抱き、学ぼうとする姿勢が身についてくる。非常にいい労働環境の中で働いていると思います。

2016年設立ということで、歴史のある会社や大企業にありがちなしがらみや慣習が感じられないのもいい。転職経験のない人にはわかりにくい話だと思いますが、こういうところもじつは素晴らしいところだと感じています。

井上

私も中途入社なので、柵木さんの言っていることはよくわかります。

電通デジタルには会社全体として変化への理解があり、こちらからの希望/要望は可能なかぎり聞き入れて、柔軟に対応してくれる土壌があります。

個人的には、電通グループの一員であることで、大企業水準での経営基盤や制度がありながらも、ベンチャーのような柔軟性や新しいことへのチャレンジ精神があるところがいいなと思っています。

脚注

注釈
1. ^.広告量シェアともいい、あるカテゴリーにおける全広告量を分母にした、当該商品の広告の割合を示す数値。広告の絶対量ではなく、競合他社との相対量を表している。 2. ^Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4つの頭文字をとった略語で、継続的な業務改善を促す仕組みのこと。