電通デジタル
新卒採用サイト

PROJECTS:06 グローバル

米データマーケティング会社Merkleとの協業で、資生堂クレ・ド・ポー ボーテにロイヤルティプログラムを導入

  • オウンドメディアプランニング事業部 八十島慶子
  • オウンドメディア事業部 井須弘恵
※所属・役職は2021年6月時点のものです。

顧客のロイヤルティ向上とライフタイムバリュー(以下、LTV)向上は、どのような企業やブランドにとっても重要な課題です。

ロイヤルティは、企業やブランドへの信頼や愛着度のこと。ライフタイムバリューは、顧客1人から生涯にわたって企業が得られる利益のことで、「顧客生涯価値」と訳されます。

ロイヤルティプログラムは、そうした課題を解決する目的で実施されるマーケティング施策の一つです。

電通デジタルは、資生堂クレ・ド・ポー ボーテへのロイヤルティプログラム導入にあたり、電通グループのデータマーケティング企業Merkle(マークル)と協業し、戦略・開発・運用に携わりました。

海外企業と連携してプロジェクトを進めるために、デジタルマーケターに必要な能力やスキルは何なのか。電通デジタルの担当者2人に聞きました。

※本記事は、2021年4月に公開したトピックス記事を、定期採用サイト用に再編集したものです。

LTV向上のためにロイヤルティプログラムの導入を模索

クレ・ド・ポー ボーテは、資生堂の中で、どういう位置付けのブランドですか? また、本ブランドはどういった課題を持っていましたか?

八十島

クレ・ド・ポー ボーテは、スキンケア、カラーメイクアップ、ベースメイクアップの商品を提供する最高峰のラグジュアリーブランドです。

現在、世界16の国と地域にブランドサイトを展開していて(2021年7月時点)、多くのお客さまにご愛用いただいていますが、ブランドの維持・拡大のために、ブランドイメージの理解・浸透と、継続的な購入によるLTVの向上を必要としていました。

その手段の一つとして、クレ・ド・ポー ボーテ専用のロイヤルティプログラムを導入できないか、資生堂からご相談をいただきました。

ロイヤルティプログラムとは?

八十島

ブランドに愛着を抱き、継続的に利用してくださるロイヤルカスタマーを維持・育成するための仕組みのことです。クレ・ド・ポー ボーテはグローバルブランドなので、グローバルで統一したブランド体験を提供する必要があります。そのためにも、ブランドとして一貫性のある戦略が求められました。

今回のプロジェクトで構築したクレ・ド・ポー ボーテのロイヤルティプログラムの概要を教えてください。

八十島

クレ・ド・ポー ボーテ メンバーシッププログラム」という名称で、公式アプリ、公式LINEアカウント、公式Webサイトのメンバー登録ページから登録してご参加いただきます。

実店舗/オンラインショップでの商品の購入、サロンでの施術に応じて、100円(税抜)につき1ポイントの「ラディアンスギフトポイント(以下、ポイント)」が付与されます。このポイントは、クーポンやお金への交換はできません。「ラディアンスギフト」との引き換えにのみ使われます。

「ラディアンスギフト」はこのプログラム専用の特別な記念品で、毎年テーマを設定し、パッケージも含めてクレ・ド・ポー ボーテの世界観を表現したオリジナルなものが作られます。ここでしか手に入らない「ギフト」がブランドとお客さまをつなぎ、一人ひとりにラグジュアリーなブランド体験を提供します。

世界有数のデータマーケティング会社Merkleとは?

本プロジェクトは、電通グループのMerkle(マークル)と協業しています。その経緯を教えてください。

八十島

ロイヤルティプログラムの構築にあたり、Merkleが自社開発したロイヤルティプログラムソリューション「LoyaltyPlus(ロイヤルティプラス)」導入を検討したいということで、資生堂からご相談をいただいたのがきっかけです。

LoyaltyPlusは世界45ヵ国での導入実績がありますが、日本市場への導入は今回が初めて。資生堂としては、海外製プロダクトの導入に関するさまざまな懸念をお持ちでした。

そこで本プロジェクトでは、電通デジタルとMerkleが協同で専任のプロジェクトチームを組み、ロイヤルティプログラムの戦略策定から構築、運用までをワンストップで実施しました。

Merkleは日本ではまだあまり知名度が高くありません。どのような会社なのでしょうか?

八十島

Merkleは1971年に創業、アメリカ・メリーランド州に本社を持つ世界有数のデータマーケティング会社です。2016年にDentsu International(旧電通イージスネットワーク。電通グループの海外事業を統括・支援する会社)にグループ入りし、電通グループの一員となりました。People-Based Marketingをベースとした、幅広いデータ活用型マーケティングを統合的に提供できる会社です。

現在は、アメリカ、アジア、ヨーロッパを中心に50以上の拠点を持ち、12,000名以上のスペシャリストが所属しています(2021年7月時点)。テクノロジー領域とデータ領域の人材が全社員の過半数を占めるというユニークな組織体制で、プロジェクトごとに最適なメンバーを配置してチームを編成するという特色があります。

特にブランドロイヤルティを高める顧客リレーション構築を得意としており、戦略設計からシステム構築、クリエイティブサービス、プロモーションの実施まで、end-to-endで、ロイヤルティマーケティングソリューションを提供できるのが強みです。

八十島慶子

2008年中途入社。外資系企業のローカライズ案件や日本企業のグローバル案件に従事し、2019年から資生堂クレ・ド・ポー ボーテのグローバルサイト運用とロイヤルティプログラムを担当。

ロイヤルティプログラム導入のプロジェクトスケジュール

今回のプロジェクトはどのようなスケジュールで実施されたのでしょうか?

八十島

今回は全体スケジュールを、戦略フェーズ(約6ヵ月)、開発フェーズ(約9ヵ月)、運用フェーズ(現在も継続中)の3つに分けて進めました。

各フェーズにおける電通デジタルの役割を教えてください。

八十島

戦略フェーズでは、Merkleが中心となって構築するロイヤルティプログラムの内容をキャッチアップしつつ、開発フェーズに向けてのアサイン準備等を行いました。

開発フェーズでは、フロントエンド(Webサイトでユーザーが見たり操作したりする部分)の開発に加え、LoyaltyPlusの実装を担当したMerkleのチームと、資生堂関係者(PMO[注1]、カスタマーサービスの担当者のほか、資生堂が別途契約している外部パートナーなど)と密にコミュニケーションをとりながら、全体の進行管理を行いました。

運用フェーズでは、インシデント(重大な事故につながりかねない事象)への対応や、クライアント企業からの依頼などの運用サポートを担当しています。電通デジタルから直接システム内のデータにアクセスすることはほぼなく、システム保守を担当するMerkleをディレクションするという形で運用しています。

スムーズな開発・運用を可能にしたMerkleとの協業体制

海外製プロダクトを導入・運用する際には、日本市場特有の難しさがあると言われていますが、本案件ではどうでしたか?

井須

グローバル展開のプロジェクトでは、フェーズごとに担当する会社やメンバーが完全に入れ替わるのが一般的です。前フェーズでの実施内容や知見が引き継がれないことも頻発し、開発や運用に支障をきたすことが多いのですが、Merkleとの協業プロジェクトでは、そういったことがまったくなかったので、非常に運用しやすいです。

インシデントは、基本的にMerkleのエンジニアチームが対応しています。Merkle社内での連携もうまく機能しており、さまざまな場面で助けられています。

八十島

運用のしやすさの要因は、開発メンバーが引き続いて運用サポートを担当する体制であることが大きいと思います。それがMerkleの特徴でもありますが、グローバル展開しているプロジェクトとしては、そうした体制は非常に珍しいです。開発チームが運用もサポートしてくれるというのは、発注する側の日本企業の視点で見たときには、とても心強いのではないでしょうか。

井須

インシデントへの対応や、クライアント企業からの依頼などは、基本的にMerkleのチームと電通デジタルが一緒に行っていますが、ほぼリアルタイムにきめ細やかな対応が可能な点は、クライアントからも高評価でした。Merkleは世界中をカバーできるタイムゾーンごとに開発拠点があるので、このように時差を考慮した体制づくりが可能な点も好感ポイントのひとつですね。

井須弘恵

2019年中途入社。大学を卒業後、Webディレクターとしてキャリアをスタートし、個人事業主から大手企業まで様々な事業のWeb開発ディレクション、プランニングを経験。電通デジタルに入社後、外資系企業のオウンドメディア運用に従事し、2020年から資生堂クレ・ド・ポー ボーテのロイヤルティプログラム運用を担当。

グローバルプロジェクトで求められる英語能力、コミュニケーションスキル

Merkleチームとのやりとりは英語で行っているかと思います。ミーティングやディレクションを円滑に進めるためには、どれぐらいの英語能力が必要ですか?

井須

TOEICでいうと700~800点ぐらいのイメージです。スピーキングは中学単語レベルでも問題ないと思いますが、オンラインミーティングは声だけのやり取りになるので、リスニングは英語を英語のまま理解するレベルを目指すのが良いと思います。

八十島

英語のスキルも必要にはなりますが、それ以上に「忍耐強さ」が大事になってくるかもしれません。文化の異なるクライアントやメンバーとのコミュニケーションでは、想定外のハプニングも多くなるので、想像力を働かせて、状況に応じて臨機応変な対応をすることが求められます。それは普段の業務でも同じですが、グローバルな案件では特に大切なことだと考えています。

おふたりは、デジタルマーケティングの実務に必要な英語能力を、どのように身につけましたか?

井須

私は中高のときは英語が苦手だったのですが、大学時代にイギリスに1年間留学して留学中に文法とリスニングを一からやり直しました。聞き取れないと話せないので、BBCやTEDを使ってディクテーションを毎日行ったところ、かなり聞き取れるようになりました。実務で英語を使うのは本プロジェクトが初めてだったのですが、参加直後は知らない言葉も多く、メモをとり、あとから調べたりしていましたが、慣れるとある程度使う言葉も決まってくるので、自然と身についてきたように感じています。

八十島

私は中高のとき父の転勤で2年半ほどオランダに住んでいたので、学校では英語で過ごしたことによって、ある程度の日常会話は理解できるようになりました。社会人になってからは実務でときどき英語を使うことはありましたが、展示会やワークショップなど一時的な英語対応を除いては、メールやツール上でのテキストのやり取りが中心でした。ここ数年でグローバル案件が増えてきたので、実践しながら徐々に必要なスキルを身につけてきているのかなと思います。

Merkleメンバーとのコミュニケーションで齟齬が起きないように、普段の業務で特に気をつけていることはありますか?

井須

ミーティング中は相手が伝えてくれたことを自分の言葉にして言い直して、きちんと自分が理解できているか、認識に齟齬がないか確認したうえで、次のステップは「誰が」「何を」「いつまでに」やるのか、テキストでメモを残すようにしています。理解できないことがあったときは図にしたり資料にしたりお互いに工夫をしています。

八十島

技術的な内容はロジカルに考えて発言しないと、なかなか意図が伝わりません。
すぐに理解できない場合は資料化して何度か説明してもらったり、画面を共有しながら疑問に感じたことを確認したり、お互いにわからないことをそのままにして先に進めないように気をつけています。日本語でのやり取り以上に、些細なことも丁寧に話し合うようにしています。

電通アイソバーとの合併で、グローバルソリューションの提供力を強化していく

本プロジェクトでMerkleと協業したことにより、新たに見えてきた電通デジタルの強みは何ですか?

井須

本プロジェクトを通じてMerkleとの協業体制が確立したことで、グローバルな視点に基づいた戦略策定の部分が強化されました。今後はCRM(Customer Relationship Management:顧客情報を一元管理して、顧客ロイヤルティを向上させる手法)やSalesforce(クラウドベースのCRMシステムや営業支援システム、マーケティング自動化ツールなど)開発などの領域での協業も予定しており、本当の意味でのワンストップなデジタルマーケティングが提供できる体制が整ったと言えます。

八十島

電通デジタルには、その前身の電通イーマーケティングワン時代を含めると10年以上にわたり、CRM領域のグローバル案件に対応してきたノウハウの蓄積があります。海外製プロダクトを日本に導入するローカライズ案件、日本から海外マーケットに各国展開するグローバル案件、両方の経験を豊富に持つのは強みだと思います。

2021年7月に、電通デジタルは電通アイソバーと合併しました。CXやグローバルでの強みを有するアイソバーとの連携により、さらに強力なワンストップのプロジェクト体制を組むことができるはずで、大きなクライアントメリットだと考えています。

最後に、グローバルで活躍するデジタルマーケターになりたいと考えている就活生へ向けて、ひと言お願いします。

井須

マーケターは社内、社外問わずいろいろな人と関りながらクライアントのために課題解決を行う職種です。グローバルでそれが対応できると課題の解決方法の可能性が広がりますし、新しい視点も取り入れることができるなと感じています。日本語、英語問わずコミュニケーション力は求められると思いますが、チームで働くことが好きな人は楽しめる仕事ですよ!

八十島

電通デジタルではさまざまな事業領域でたくさんのプロフェッショナルなメンバーが活躍していますが、グローバルに視野を広げると仕事の可能性はさらに広がります。これからも進化を続けるデジタルの世界で、グローバル領域にチャレンジする仲間をお待ちしています。

脚注

注釈
1. ^Project Management Officeの略。組織内でプロジェクトマネジメントの支援を組織横断的に行う部門のこと。