2022年01月27日

デジタルトランスフォーメーション

コラム

BtoBマーケティングのDXは、なぜ進まないのか?成功のための打ち手をCX視点から完全解説

※所属・肩書は2021年12月時点の情報です。

コロナの影響によって、リアルの接点が減り、オンラインシフトが急激に進みました。BtoB企業もマーケティングのDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるところが多い中、その成果を感じられていないという声も聞かれます。

BtoBマーケティングのDXを阻む要因は何か。そしてどうすればDXを進めることができるのか。本稿では、BtoB領域のマーケティング、DXを得意とする電通デジタル、ミーミルメディックスの3社がそれぞれ、BtoBマーケティングのDXを成功させるために必要な打ち手を、CX(顧客体験)の視点から紹介していきます。

本記事は、2021年12月3日に開催されたウェビナーの内容を再構成したものです。

BtoBマーケティングのDXは、CX視点の「顧客理解」「顧客管理」から(電通デジタル)

なぜDXが必要か、その本質を理解できていますか?

押山BtoBマーケティングにDXが必要になった理由。それは、コロナの影響によって、顧客とのコミュニケーションの主戦場が、対面からオンラインに移行したからです。

飛び込み営業や訪問営業を望まない顧客が増え、さまざまなコンタクトポイントがオンラインに置きかわりました。それに伴い、検討リードタイムが長期化する一方で、逆に商談リードタイムは短縮化。そうした顧客とのコミュニケーションの大きな変化に対応するために、BtoB企業においても、DXは避けて通れない状況となりました。

DXで効果を出すためのセオリー

経営層や上司から「DXの成果はどうか?」と急かされている担当者の方も多いかもしれませんが、焦ってMA(マーケティングオートメーション)ツールやSFA(営業支援)ツールを導入してはいけません。DXとは拙速に進めるものではなく、段階的に進めていくものです。

DXをどのように進めるべきか、「アンゾフのマトリクス」[注1]を使って説明します。「アンゾフのマトリクス」でビジネス領域をセグメントすると、多くのBtoB企業の事業コア活動は、左上の「市場浸透」領域(既存顧客に既存サービスを提供)に留まるケースが多いと思います。それが従来からの日本企業独特の課題でもありました。


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収益を拡大していくためには、「市場浸透」領域から「新規開発」領域(既存顧客に新規サービスを提供)や「市場開拓」領域(新規顧客に既存サービスを提供)に手を広げ、そこから「多角化」領域(新規顧客に新規サービスを提供)へと、段階を追って拡張していく必要があります。この3つがDXで実現する領域です。

この流れを顧客の視点、すなわちCX視点[注2]で改めて説明すると、まずコア事業で「顧客理解・顧客管理」をしっかり行うこと。それを踏まえて、「ソリューション開発」「デジタルマーケティング」を展開すること。その成果を活用して「多角化」することで、収益源となるビジネス領域を大きく拡大していくこと。この流れに沿って着実に進めることが、CX視点でDXを成功させるためのセオリーです。

顧客理解を進めるカスタマージャーニーマップの使い方

最初の段階である「顧客理解」と「顧客管理」は、似ているようでまったく異なります。まず「顧客理解」を平たい言葉で説明すると、「顧客の現状を知り、課題を知り、どのような意識を持って、どのような行動をとっているかを知ること」です。


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具体的に「顧客理解」を深めるには、「リサーチ・整理」「顧客体験設計」「プロセス設計」という3つのステップを段階的に進めていきますが、この3つのステップの中でもっとも重要な作業は、「顧客体験設計」で行うカスタマージャーニーマップの作成です。

カスタマージャーニーマップとは、「顧客が製品(サービス)を知って購入(利用)するまでのプロセスがひと目でわかるようにまとめた図」のことです。これによって、顧客とのコミュニケーションギャップを発見し、顧客のニーズに応じた打ち手と最適なタイミングを設計することができます。

ただし、BtoBマーケティングにおけるカスタマージャーニーマップは、BtoCのものとは異なる点があります。作成時のポイントは以下のとおりです。


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また、BtoBの場合、カスタマージャーニーマップは2種類作成しておく必要があります。1つは、成約までのプロセスを描いたマップ、もう1つは、利用による成功を描いたマップです。

BtoBでは、取引の有無によって、企業と顧客の関係や求めるニーズが大きく変わるため、1枚のマップではプロセス全体を正しく描けません。そこで、成約前(デマンドプロセス)と成約後(グロースプロセス)でカスタマージャーニーマップをそれぞれ作成する必要があります。

カスタマージャーニーマップは、個々のステップで発生した顧客との接点で何をするべきか、ということを整理し、メンバー全員がそのことについて共通の理解を得るためのツールです。実際の顧客がマップどおりにジャーニーすることはほとんどありませんが、マーケティング、インサイドセールス、営業、それぞれの部署で、顧客に対しての認識や対応を共有することで、顧客理解をより深めることができます。DXに着手する前に、必ず作成してください。

顧客管理を実現するデータ統合の進め方

顧客理解と並んで大事な顧客管理とは、「顧客の情報(データ)を管理して、顧客の状態を把握し、顧客に的確にアプローチできるようにすること」です。

コロナによって訪問営業や展示会による顧客情報の収集が難しくなった今、その重要性が特に大きくクローズアップされています。


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「顧客管理」の根幹となるのが、データ統合です。社内に散在している「マーケティング基本データ」と、顧客データの質を向上させる「マーケティング高度化データ」、この2つを統合し、「企業」「人」という単位でセグメント化することで、個々でデータを活用できる環境が整います。その状況が、いわゆる「データ活用の民主化」であり、「顧客管理」において、最終的に目指すべき姿でもあります。


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データ統合を実現するには、統合する構想または目的を位置づける「①グランドデザイン設計」から「②統合形式検討」「③統合手法導入」、そして稼働した後の「④マネジメント」の4つの手順を踏んで行います。4つの手順のうち、もっとも大事なのが「④マネジメント」です。データ統合した後に、データを活用できる状態を維持し、現場と連携しながら活用に結びつけていくのが「④マネジメント」です。データ統合による顧客管理の効果を最大化するためにも、運用・改善へのリソースに対する継続的な投資は非常に重要です。

データは統合して終わりではありません。顧客へ的確にアプローチを行うために、マーケティング、営業、インサイドセールスなど、セールスに関わるメンバー全員がそれぞれの役割・活動内容と、顧客データ生成の仕組みを理解しておくことこそ、データを用いた部署間の会話を促進し、BtoBで重要とされる連携が実現されます。そのため、CX視点のBtoBマーケティングDXで成果を上げ続けるために「データ統合による連携」が顧客管理においてもっとも大事なポイントとも言えるでしょう。

BtoBビジネスの複雑な顧客理解はどう解決するのか(ミーミル)

BtoBビジネスの顧客理解はなぜ複雑なのか?

中川押山さんからもお話がありましたが、BtoBマーケティングのDXの起点となるのは顧客理解です。私からも重ねて、なぜ顧客理解が大事なのか、そして顧客理解を深めるには具体的にどうすれば良いのかをお話しします。

BtoBマーケティングの顧客理解には、BtoCとは異なる、独特の難しさがあります。なぜなら、企業とは1人の生活者ではなく、多様な側面を持っている存在だからです。BtoBで顧客理解を深めるには、顧客企業そのものだけでなく、周辺プレイヤー、バリューチェーン、支援プレイヤー、商流など、その周辺まできちんと理解しなくてはなりません。

また、顧客企業の関心を先んじて理解することも大事です。様々なビジネストレンドが次から次へ出てくる中、顧客自身がさまざまなテーマに興味関心を持ち勉強しています。だからこそ、同じ目線に立ちつつ、先んじてトレンドを把握しておく必要があります。それによって、伝えるべきメッセージや切り口が見つけやすくなります。


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BtoBビジネスの顧客のインサイトを理解するということ

顧客理解とは、言葉どおり「顧客のインサイトを理解する」ことですが、実際はどこまで実践すれば「理解できた」ということになるのでしょうか。

ミーミルでは、この2、3年で350社以上のお客様と向き合い、通算6,000件以上の調査系案件に携わってきました。その経験から言えるのは、「顧客を正しく理解するためには、質の良い一次情報が必要である」ということです。

いわゆる二次情報や周辺ヒアリングによってターゲット企業の経営課題を理解した、と仰るお客様もいますが、そうした情報だけでは、顧客のペインやゲインを正しく理解することはできません。

一次情報/知見獲得における「質が良い」とはどういうことか?

では、「質の良い一次情報」とはどういう情報を指すのでしょうか。ミーミルでは、「独自性」「クオリティ」「獲得スピード」、この3つの視点によって取捨選択された外部情報/知見こそが、「質の良い」一次情報であり、DXの構想/実装の質とスピードに寄与すると考えています。


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BtoBビジネスの顧客を正しく理解するプロセス

「質の良い一次情報」を用いて、BtoBビジネスを行っている顧客企業を正しく理解する。そのプロセスを、ミーミルでは「広く」「深く」「高く」「正しく」という4つのフェーズに整理しています。このプロセスが顧客理解の基本骨格です。


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これらのプロセスにおいて、特にフェーズ2の「深く(知る)」に関しては、「エキスパートネットワーク」の利用が有効です。

エキスパートネットワークとは、さまざまな業界のエキスパート(有識者・専門家)へアクセスを確保し、それらの人へのインタビューの機会を提供するサービスです。このサービスを使えば、ターゲット顧客企業や業界、さらにはそのエンドユーザーのペインとゲインをも深く知ることができます。

ミーミルでは、エキスパートネットワークサービスを通じて、エキスパートへのインタビュー、ヒアリングのほか、インタビューを代行してレポートにするなど、一次情報収集をまるごと受託するサービスも行っています。

また、「FLASH Opinion」[1]というWeb上でエキスパートに質問し24時間以内に回答をいただくというサービスもスタートしています。BtoBビジネスにおける顧客理解に課題を感じておられる担当者の方は、ぜひご相談ください。

ユースケースからわかるBtoBビジネスの顧客理解

最後にユースケースとして、UZABASEグループの自社マーケティングを紹介します。

先日、ミーミルでは「ヘルスケア×新規事業の進め方と3つの新戦略」というウェビナーを開催しました。目的は新規顧客獲得、対象は製薬業界やヘルスケア業界向けの支援を行っている企業です。想定顧客ターゲット群がどのようなペイン(課題や悩み)を持っているかを把握してウェビナーの企画に役立てるために、先ほど紹介したフレームワークに沿って自主調査を実施しました。


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まずSPEEDAを使ってデジタルヘルスに関連するトレンドや企業動向を把握し、それからFlash Opinionを使って、デジタルヘルスに取り組んでいる企業がどのようなペインを持っているのかを聞きました。すると、オンライン診療やAI画像診断技術の実装といった個別テーマではなく、事業立ち上げやマネタイズが実際のペインであることが明らかになりました。

次に、我々が自社で保有しているデジタルヘルス関連案件の実績データを定量的に分析し、「バイタルデータなどを取得した後のマネタイズ方法」「ヘルスケア業界特有のステークホルダーの巻き込み方」といった関心が存在するという確信を得ました。

最後に、エキスパートとしてネットワークしている方の中から、医師、ベンチャー企業家、元厚労省という経歴を持つ加藤浩晃氏をアサインして、ウェビナーを実施しました。

かなりターゲットを絞った業界特化型のテーマでしたが、集客は約300名、最終的に15件が商談化まで進み、非常に高い効果が得られました。ひとつの例ではありますが、このようなプロセスを有効な方法として覚えていただけると幸いです。

BtoBマーケティングにおける売れる仕組みづくりの第一歩(メディックス)

売れるためのPDCAサイクルを確立する

前野BtoBビジネスのデジタルマーケティングにおいて、売れるまでの基本プロセスは、「集客」して、「Webサイト・コンテンツ」から「問い合わせ」をしてもらい、「営業・インサイドセールス」を経て「商談化・受注」という流れになります。

この流れの中で最初に最適化していくべきポイントは、特にPDCAが回しやすい、「集客」「Webサイト・コンテンツ」の部分です。この部分を最適化しながら、「売れる仕組みづくり」を始めていきます。

「売れるためのPDCAサイクル」を図に表すと下図の通りです。顧客理解からの仮説立てを核に(Plan)、仮説に則ったコミュニケーション設計・ターゲティングでの施策実行を行い(Do)、それを踏まえて効果検証を実施(Check)。その検証結果から施策のチューニングを行う(Action)。このPDCAサイクルを確立することが、売れる仕組みづくりの第一歩です。


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多くの企業がつまずくのは効果検証

売れる仕組みづくり、PDCAサイクルの確立において、多く企業がつまづくポイントは、「効果検証」のフェーズです。「効果検証」において「Webサイトの解析」は重要ですが、弊社のBtoBマーケターを対象としたアンケート結果によると、Web解析ツールを使いこなせていない企業が多いという状況が見えてきました。アンケート調査によると、「アクセス数を見るだけ」が36.6%と、Web解析ツールを使った効果検証ができておらず、見るべきデータ・指標を押さえて、PDCAを回せていない企業が多いことがわかります。

事例:Web解析データを活用したコンテンツ制作のPDCA確立

Web解析ツールを活用することで、どういった効果検証ができるのか。具体例として、BtoBのIT企業で、自社WebサイトのCV(コンバージョン)を増やすためのPDCAを構築するために、Googleアナリティクス(以下、GA)で効果検証を行った事例を紹介します。

WebサイトをGAで解析してみたところ、CVと相関性の高い指標である「非直帰率」が15.21%、「再訪問率」が14.1%、ともにかなり低いということがわかりました。


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回帰分析の結果から、セッション数を増やすよりも、再訪問数、非直帰数を改善していく方がCV増加しやすいことが明らかだったため、CVはもちろんのこと、再訪問数、非直帰数に貢献しているページ、貢献していないページを見える化して、コンテンツのチューニングを行っていきました。その結果、6ヵ月後にはCV数が約1.5倍に増加しました。このように、見るべきデータ・指標を押さえて、Web解析ツールを活用することができれば、PDCAを回し、効果検証・改善していくことが可能になります。


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BtoBマーケティング施策の課題

また、BtoBマーケティングの大きな課題のひとつに、「そもそも各施策が売上・商談に繋がったかまで正確に紐づけ、トラッキングできていない」ことに起因する「費用対効果の見えづらさ」があります。弊社実施のBtoBマーケターを対象にしたアンケートでも、約6割が、BtoBマーケティング施策全体の課題として、費用対効果の見えづらさを挙げています。

その課題に対しては、すでにSalesforce等のSFAツールを導入しているBtoB企業には、まずはSFAツールのデータと広告データを連携するところから始めることをご提案しています。

下図はSFAデータ(Salesforce)と広告データを連携させたことで、商談金額と売上が可視化され、施策ごとの費用対効果が見える化された事例です。


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「売れる仕組みづくり」の第一歩は「売れるためのPDCAサイクルの確立」です。そのためには商談・売上に至るまでの現状の可視化が必要です。「GAを導入しているが使いこなせていない」「Salesforceを導入しているが広告データと紐づけられていない」というBtoB企業の担当者は、ぜひお声掛けください。

3社の強みを活かした連携支援スコープ

押山最後に、電通デジタル、ミーミル、メディックスの3社が、どういう形でBtoBマーケティングのDXをご支援させていただくか、連携支援スコープを図にまとめました。


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マーケティングの戦略策定・事業開発・顧客理解は、電通デジタルとミーミルが連携して担当します。特に顧客理解については、ミーミルのエキスパートリサーチを使ったり、その情報をインプットにしたワークショップを開催することも可能です。

広告の運用・コンテンツの開発・シナリオ設計に関しては、メディックスと電通デジタルが連携することで、強力なリードナーチャリングが可能になります。

検証サイクルでは、メディックスが広告からアクセス、商談までの検証サイクル構築を行い、電通デジタルはプラットフォームの導入や、ウェビナーをはじめとした運用等も行っております。この領域でも連携したソリューションとしてご支援いたします。

また、電通グループでは、BtoBマーケティングのDXを推進するためのグループ横断組織「電通B2Bイニシアチブ」が発足しました[2]。電通グループのさまざまなリソースや知見を集合させて、あらゆるフェーズのコンサルティング、ソリューション、データテクノロジー、組織構築を各社が横断的に協力して支援します。BtoBマーケティングのDX推進に関してご相談などありましたら、ぜひお気軽にお声掛けください。

脚注

注釈

1. ^ 企業の成長戦略を検討する際に使われる定番のフレームワーク。既存/新規市場(顧客)、既存/新規製品(サービス)の指標によって、自社のビジネス領域を「市場浸透」「市場開拓」「新規開発」「多角化」の4つにセグメントすることで、今後の成長や可能性を可視化する。
2. ^ CXとは「商品やサービスを購入する前の対応から購入後のサポートまで、顧客(購入者)が自社商品に関して体験するすべてのこと」と定義される。

出典

1. ^ "SPEEDA、24時間以内に専門家のコメントを得られるFLASH Opinionをリリース". ユーザベース.(2020年9月1日)2022年1月21日閲覧。
2. ^ "電通ジャパンネットワーク、B2B領域特化のグループ横断組織「電通B2Bイニシアティブ」を発足". 電通グループ.(2021年6月29日)2022年1月21日閲覧。